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統合レポートに移行後、2年続けて「日経アニュアルリポートアウォード」で高い評価を受けた三菱重工業株式会社。今号では、三菱重工業が統合レポート「MHI REPORT」を作成するにあたって重視している点や制作における創意工夫に迫ります。

Q. 御社の統合レポートの位置づけを統合レポート移行の経緯を踏まえつつお聞かせください。

A. 統合レポート作成の目的は、「この星に、たしかな未来を」というCIステートメントの実現に向けて、当社が技術や製品を通じて日本の産業・経済の成長や発展に貢献している姿を簡潔に伝えることです。会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートという、それぞれ視点の異なる冊子がありましたが、どれも最終的に読者に伝えたいメッセージは同じですので、これらの要素を融合したレポートが必要と考え、統合レポートを発行しました。読者として想定しているのは、投資家、株主、取引先、近隣社会、学生など当社に関心をもつすべてのステークホルダーです。

現在、統合レポートは、経営陣が他社のトップに対し当社の案内をするときや、営業・各事業部が対外的に当社を説明する際の資料としても活用されており、会社案内としての役割も果たしています。

Q. 多岐に及ぶ用途で活用できるツールにするため工夫されている点を、編集方針を中心にお聞かせください。

A. 当社の統合レポートは長期投資家をはじめとするマルチステークホルダーに対し、一貫性のあるストーリーで会社の向かう方向性を伝えることを重視しています。そして、表面的な理解で終わることのないよう、単なる製品カタログやデータ集としてまとめることは避けています。

伝えるべき内容として、まず普遍的なメッセージがあります。日本の近代産業の誕生とともに生まれ、その歩みとともに発展・停滞し、そしてグローバルに発展を遂げていくという当社の歴史などがそれにあたります。当社の強みは130年に及ぶ歴史の中で蓄積した技術基盤ですので、毎年変わらぬメッセージとして伝えています。

さらに、その年に伝えるべきテーマも織り込んでいます。2015年は新事業計画策定の年に当たりますので、これを主軸に据えました。事業面ではMRJが注目を集める一方で、リスク要因として懸念する向きもあることから、MRJを特に説明すべきと考えました。組織面では監査等委員会設置会社への移行という変化を受け、ガバナンスの透明性を重点的に訴求する必要性を感じました。そこで「MHI REPORT 2015」では、中期経営計画・MRJ・コーポレートガバナンスの3つのテーマを中心に、見やすく分かりやすく説明することに留意しました。

このような誌面構成を通じ、当社の統合レポートは最初から最後まで通読することでその状況を理解できるように作成しています。IIRCのフレームワークやGRIのガイドラインについては参考にする程度にとどめ、さまざまなステークホルダーに分かりやすく伝えることを優先しています。

Q.冊子全体のページ数や各記事の分量について留意されている点がありましたらお聞かせください。

A. 統合レポートを作成するに当たり、薄すぎず厚すぎず中身が頭に入りやすいということ、持ち運びの簡便さという観点から、まずはじめに50ページ程度というページ数を上限として定めました。

各記事の分量は50ページの枠内でバランスよく収まるように構成しています。データ類も統合レポートのストーリーと関連性のあるもののみ掲載し、財務諸表や細かいデータは別冊やWebに譲りました。財務・非財務ハイライトには比較的詳細なデータを掲載していますが(12〜13頁・上図参照)、これも単なる数値の羅列ではなく、当社の価値創造モデルや直近の変化がどのような形で業績などの結果につながっているのか、分かりやすく表現する点を意識しました。

当社の統合レポートは伝えたいことのエッセンスを煮詰めて作成しています。ですが、Webとの住み分けを行っていることもあり、50ページに収めることに苦労は感じていません。情報を押し込めるのではなく、等身大の当社の姿を50ページで率直に表現することを第一に考えて作成したのが当社の統合レポートです。

■インタビューを終えて

三菱重工業の統合レポートは最初に50ページというページ数を上限として設定している点に特徴がある。その構成も、マルチステークホルダーに幅広く対応するという観点から、IIRCやGRIのガイドラインに縛られることなく、伝える必要性があることを一連のストーリーとしてまとめている。ページ数・誌面構成の双方の面において、わが道を行くスタイルが確立されているといえるだろう。

Book Review

ロバート・G・エクレス=マイケル・P・クルス著(北川哲雄監訳)『統合報告の実際』(日本経済新聞出版社、2015)

コーポレート・ガバナンス元年と言われた2015年、ステークホルダーとの「質の高い対話」を促すツールとして、アニュアルレポートは統合報告の形態を強めてきている。

本書は、まず第1章から第4章で、統合報告の歴史から、その後の発展やそれぞれの立場による取り組みなど、読者に現在の統合報告の基礎知識を示す。第5章「マテリアリティ」からは、具体的に統合報告に掲載すべき内容について論じている。秀逸なのは第7章の調査研究であり、国際統合報告〈IR〉の基準に照らし、124社の統合報告書を分析し、6つの資本と7つの内容要素、そして7つの独自の評価項目について採点を行った結果として優秀な企業名を記載している点である。最後に、第9章および第10章では、統合報告の今後について語られている。

アニュアルレポートから統合報告への移管を検討されているIR担当者の方に歴史から課題、今後までを1冊で網羅している本書のご一読をお勧めする。

編集後記

次回は議決権行使についてです(リ)/前号についてのコメントを複数いただき嬉しい限りです(乃)/統合レポート発行の目的も企業により様々なことを再認識しました(あ)/統合報告の取り組みとして参考になりました(や)/伝えたい内容が明確なことが重要だと思いました(ひ)/ページ数を先に設定するという編集方針が新鮮でした(く)