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2月7日に発表された「第18回日経アニュアルリポートアウォード」でグランプリに輝いた中外製薬株式会社。今回の特集では、中外製薬とのインタビューを通じ、統合報告書作成にあたって重視した点を生の声で届けます。

Q. 御社の統合報告書は、会社をあげての取り組みを踏まえて作成されたものという印象を受けました。全体的な作成方針を、統合報告に踏み切った経緯を交えつつ教えてください。

A. 2002年のロシュとのアライアンス以降、当社はがん領域で圧倒的な地位を獲得するなどの成果を上げてきました。しかし、成果を導くに至った強みは必ずしも社内に浸透していませんでした。そこで、2009年に「トップ製薬企業推進プロジェクト」が立ち上がり、当社の強みを全社的に共有する取り組みが始まります。目に見えない強みを洗い出し、「96の強み事例集」として社内全体で可視化しました。その強みを含め、非財務情報を読者に分かりやすく伝えることを目的に作成したのが、2012年版の最初の統合報告書です。

「96の強み事例集」は、患者さんに対する価値や競合優位性の観点から25のカテゴリーに整理・分類され、最終的に7つの強みに集約されていきます。

統合報告書2013年版以降では、患者さんの目線に立って7つの強みを表現することに力を注いで作成しています。

また、25の強みカテゴリーや7つの強みは現在、統合報告書のみならずTVCMや新聞広告といった対外広報にも展開され、当社のブランディングにも貢献しています。

Q. 「強み」を重視して統合報告書を作成されたとのことですが、2012年版から2014年版にかけて表現に関する面で改善された点がありましたらお聞かせください。

A. 2012年版の作成に当たっては、製薬業界や医薬品に詳しくない一般の方にも分かりやすい、平易な表現を心がけました。2013年版では真の統合報告として、情報の結合性を重視し、現在の強みから将来の価値創造までを記載することに留意しました。また、96の強みを25のカテゴリーと7つの強みに整理し、ロジックを整えることに注力しました。

2014年版では、過去に積み重ねた実績と現在の強みに連続性をもたせることで、将来の、中長期的な企業価値向上に対する説得力を増すことに力を注ぎました。

このように「強み」の表現方法は年々改善していますが、その根底にあるのは、「すべての革新は患者さんのために」という事業哲学であり、2012年版以来、統合報告書全体を通底する理念として位置づけています。

Q. 御社の統合報告は年々進化していますが、進化を支える制作体制についてお聞かせください。

A. 当社では、経営陣がステークホルダーとの対話や投資家に情報を分かりやすく説明することに対し積極的に取り組んでいますので、統合報告書の改善・向上にも意欲的です。統合報告書を作成したのち、経営陣によるレビューヒアリングが設けられ、翌年版の改善に向けた示唆を受けることができます。また、統合報告書の作成にあたっては、制作を統括するチームが社内の各部署に改善に向けた提案を行い、よりよい誌面を作成しています。また、緻密なスケジュール表を作成し、作業日程に遅れが出た場合に即座に反映させる仕組みを整えています。これにより、ある工程に遅れが生じた場合、代わりに別の工程を進めることが可能になり、スケジュールの後ろ倒しを防ぐことができるようになりました。

さらに、当社の統合報告書が3年連続して日経アニュアルリポートアウォードを受賞したことを受け、社内での認知度が向上し、協力体制も整備されてきています。複数の部署から統合報告書に掲載するトピックの提案を受けるようにもなってきました。

最後に、モチベーションの高い制作会社の選定と、志を同じくした効果的な協働も重要なポイントです。当社の提案に対してよりレベルの高い形で応えてくれることで、それをベースに議論を繰り返し、より良い統合報告書作成に向けた相乗的な成果が生まれています。

このような全社的なフィードバックや制作会社との連携により、当社の統合報告書は投資家のみならず、社内研修や採用活動にも活用される網羅性の高いツールになりました。今後ともより完成度の高い統合報告書の作成に向け、全力を尽くしていきます。

■ インタビューを終えて
中外製薬の統合報告書は、会社内での縦横の境目のないプロジェクトを通じて企業価値を創造し、共有していくという過程によって生み出されたものである。統合報告書も全社的なフィードバックを通じて年々進化しており、社内外での相乗効果が生まれている。このような会社をあげての長期間にわたる取り組みが第18回日経アニュアルリポートアウォードのグランプリ獲得という成果になって表れたといえるだろう。

IR updateから

原文:Managing Sell-Side Analyst Coverage(IR update FEBRUARY 2015 pp. 11-12)

アナリストによるコンセンサス予想が投資家に与える影響力は大きい。従って、大企業はアナリストが確実な根拠に基づくコンセンサス予想を形成できるよう努めるべきである。企業を取り巻くアナリストのなかには、不十分な調査に基づき当を得ないレポートを書くアナリストもいる。企業はこのようなアナリストに対し、インベスター・デイの開催や経営陣とのミーティングを通じて企業理解を促している。

しかし、そのすべてが 成 功しているわけではなく、IROは時に会社のストーリーを理解していないアナリストによる誤ったコンセンサス予想に直面する。その対策として、次期四半期や通期見通しなどの情報を充分に市場に提供し、アナリストの調査不足や誤った認識を防ぐ企業も見られる。その企業の経営者は、「最優先事項はバイサイドの自社に対する理解の促進である。そこで、当社はアナリストが高水準のレポートを作成できるよう注力している」という。

編集後記

企業価値を高めようとする情熱がよいレポートに繫がることが実証された(リ)/トレンドの先をとらえた情報提供を実現します(乃)/ “伝わる” 情報発信の大切さを感じました(ま)/刷新された新IRInsight、今後ともよろしくお願いします(あ)/インタビュー記事がとても参考になりました(や)/優れたIR活動は “一日にしてならず”(ひ)/特集や海外誌を通じて私も刺激を受けました(く)


IR Insight_2016.2