今月号と来月号では、2014年12月3日から5日にかけて開催された全米IR協議会(NIRI)シニア・ラウンドテーブルの年次会議で議題となった主なポイントの概要を取り上げます。この会議に参加できるメンバーは、NIRIの会員で、かつ10年以上IR業務に携わっている者に限定されています。IR業界において指導的な役割を徐々に高めてきたこの会議は、IR業務のあるべき姿を追求するために、米証券取引委員会(SEC)やその他の公的機関および民間部門に対して助言を行っています。今回の会議では、アクティビスト投資家、アクティビズムとコーポレイト・ガバナンスの関係、発行体である企業と機関投資家とのコミュニケーションの進展、重要性の高まる持続可能性や他の非財務報告形態、機関投資家の意見をCEOやCFO等の取締役会メンバーへ報告するに際し、ますます重要性が高まるIRオフィサー(IRO)の役割等について討議されました。

増大するアクティビズム投資家への対応

2013年と同様に、2014年のNIRIシニア・ラウンドテーブルで最も重要な話題は、投資家の中で比率が高まっているアクティビズムにいかに対応するかということでした。米国の調査によると、資産配分、取締役の地位といった課題に関して経営方針を変えさせようとする、いわゆるアクティビストの会社数は、2009年以来、急速に増加し、50社以下だったものが、2014年上期だけでも200社近くにまで増加しました1。同様にアクティビストに分類される機関投資家が管理するファンドの金額も急速に拡大しています。

調査によれば、アクティビズムの拡大傾向は弱まる気配がありません。それどころか回答者の89%は、今後もアクティビズムは増えると見ています2。また、回答者の約63%は、投資家が否定的に感じる点はアクティビストにとっては最も重要で、魅力的な標的の特徴であるとし、69%はこうしたアクティビストの標的になっている企業に投資することによって、アクティビズムを支持すると答えています。

今回の会議の出席者やNIRIのウェブセミナーの参加者からは、以下のようなコメントがありました。

  • 「重要なのは、アクティビズムが機能しているということだ。アクティビストに分類されなくても、アクティビズムを支持する機関投資家はしばしば見られる。だから、アクティビストによる一連の攻撃が上手くいきそうになると、より幅広い投資家が、攻撃されている会社の株式を買うことがある。」
  • 「アクティビスト投資家やアクティビストによる一連の攻撃の件数は増え続けている。この10年で1,000件にも上る。」
  • 「アクティビストによる一連の攻撃が成功する要因には、彼らがツイッター等のソーシャルメディアを積極的に活用していることもある。通常のメディアもソーシャルメディアもどちらも重要性が高まっている。」
  • 「今年はアップルやeBayといった大企業でさえ、アクティビストに攻撃された。もはや、企業規模は防御にならない。」
  • 「アクティビストの一連の活動は、米国から海外へと拡大している。」

企業がアクティビズムの標的となってしまう要因は何かという点についての討議では、会議参加者から以下のような意見がありました。

  • 株価が低迷:多くのアクティビストは、同等の株式に比べて相対的に株価パフォーマンスが悪い会社を探し求めるバリュー投資家である。
  • 資産配分に課題:アクティビストは企業がどのように資産配分をしているかについて詳しく調べている。彼らは、「どこにキャッシュを使っているのか。」、「R&Dに資金を使い過ぎていないか。また、R&Dの費用対効果について透明性のある評価をしたくないのではないか。」といった質問をする。
  • 報酬:業績が悪い時でさえ、役員報酬は高過ぎるのではないか。
  • コーポレイト・ガバナンス:取締役会は、戦略立案において適切に貢献し、短期的および
    長期的な視点から、株主利益のために会社の舵取りを行っているか。

聞くところによると、アクティビスト投資家は、上記のような課題のある、またはそのような課題が起きそうな様々な企業を洗い出します。次に、そうした企業を調査し、通常は数年にわたって追跡調査します。その中には、こうした潜在的な投資先企業の周辺にいる顧客や取引先、退職者、競合会社といった関係者へのインタビューも含まれています。

中長期的な企業価値向上に関心のある、企業にとって好ましい意図をもつアクティビストは、一般的に対象とする企業の経営者へ、徹底した調査に基づく資料を提示して助言を行います。もし企業が助言を聞きたいと思うのなら、建設的な議論への道が開けるかもしれません。一方、通常、短期的な利益を目指す「敵対的」なアクティビストは、自社株買いや配当の増額等、短期から中期で株価を上昇させる助言だけにしか関心がないのかもしれません。そして短期目標が達成されれば、彼らは保有株式を売却します。

アクティビストに対処するために企業はどのように備えたらよいのでしょうか。2013年NIRIラウンドテーブルについての当社レポートでは、同会議出席者の助言を以下のように報告しています。

  • 自社の株主の中にアクティビストが存在しているかどうかを把握するため、株主判明調査を行う。
  • 好意的な意図の有無を基準に投資スタイルを特定し、好意的な意図をもつ投資家を敵対的投資家と区別して分類する。
  • アクティビストの観点に立って、自社の脆弱性を分析する。
  • アクティビスト投資家への最も効果的な対応策を講じる。

さらに2014年シニア・ラウンドテーブルの参加者からは、以下のような提言もありました。

  • アクティビストが掲げる問題の本質を特定する。問題がメディアに報道される前に、妥当な解決策を打ち出せるか。
  • 会社の代弁者として取締役を指名し、アクティビストが提示する問題に関して、広報面での取りまとめ役とする。
  • 最も聡明なアドバイザーを起用する。
  • 可能な妥協案を探る。ある程度、譲歩することにより、早期に和解できるか。
  • アクティブファンドのみならずパッシブ(インデック)投資家等、全ての機関投資家と定期的なコミュニケーションを維持する。
  • 継続的にアクティビズムの動向を把握する。
  • 何より、準備しておくこと。アクティビストと直接に対応した経験のある会議参加者によると、アクティビストの攻撃にさらされている企業は、適切な対応ができるように準備しておかなくてはならないと強調した。最初とそれに続く対応が、その後の意思疎通の方向性を決めてしまうので極めて重要だと言える。

アクティビズムとガバナンスの関連

コーポレイト・ガバナンスに関する問題は、しばしばアクティビストの攻撃の原因になります。一例として、ある有名な映画会社は、創業家が取締役の地位やその他経営面でいまだに強い支配力を保持しています。過去、その会社は取締役の定年を72歳と決めたにもかかわらず、創業家のメンバーは役員定年を過ぎても会社に留まっていました。IRに近い組織にいたこの発言者によれば、この会社の取締役会は散漫になり、投資家が同社株価への評価を引き下げる要因となりました。

この発言者は、こうした状況がどのように対処されるべきだったのかという点についても見解を示しました。まず、取締役会は、投資家の認知度調査も含め、独立した組織に株価低迷の理由を分析させるべきでした。そして取締役会はその結果を客観的に検討し、適切に行動すべきでした。しかしながら、このような状況において取締役会は関連する課題を先送りし、ファンドマネージャーやアナリストとの面談を通じて直接、投資家に対して取締役会の構成上の自分たちの立場を説明するという道を選びました。

また、アクティビストは、取締役会に役員を送り込むよう要求してくることがあります。これに対して企業は、アクティビストの見解を注意深く分析した上で、アクティビストを説得し、納得させることが必要です。こうして、実際にアクティビストの代表者が取締役会に名を連ねることなく、企業はアクティビストからの攻撃を拒むことができます。なお、投資家向けには、取締役からIRのみならず広報活動全体を代弁できる担当者を指名するとよいでしょう。これはアクティビストに対して融和的な方法で機能するのみならず、情報の流れをコントロールし、株主価値の維持向上という企業目的を達成するため、経営者に正しい視点を与える効果があります。

結局のところ、コーポレイト・ガバナンスの役割は、企業経営において規律を行使することにあります。一方で、IRは企業価値の成長を促進し、株主への事業活動の報告を通じて企業経営を改善し、それにより株主の評価に対して規律を与える行動といえます。日本のコーポレイト・ガバナンス革命が進展し、企業がガバナンスを実施するのであれば、企業価値を向上する上で、IR活動はより一層、重要な役割を果たしていくことになるでしょう。

執筆 代表取締役会長 C・テイト・ラトクリフ

1 IPREO: “Activism, Ready or Not”
2 FTI Consulting